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iPadと医療

休憩がてらSoftBank Days 2010のアーカイブをさっき見ました。iPadの普及のためにいろいろお話されていましたね。iPadの医療への普及に努めていらっしゃる神戸大の杉本先生もプレゼンしておられました。情報格差や伝達といった様々な障壁により生まれている医療の閉塞状態(医領鎖国)をiPadなどモバイルデバイスを駆使することで情報伝達の障壁をなくして、リアルタイムに質の高い情報をいきわたらせて閉塞を打破することを提唱されていました。まさにその通りです。 僕は研修医の頃からPDAを使って情報の携帯性を重視していました。リファレンスは携帯してこそ活用の機会が増えて最大限に生かせます。今でもPDAはリファレンスとして日常診療や研究に切り離せない存在です。iPadを導入後はリファレンスデバイスはiPadになっています。たくさんの情報が視認性よく閲覧できるのはiPadならではです。3Gは院内ではダメだけど、Wi-Fiは充実してきていて、今や仕事には欠かせないメール(うちではGmailが導入されGoogleのクラウドが使えます)、情報管理に必須のTwitterとEvernoteをiPadで運用し、リファレンスだけでなくクラウド端末としてますます重要な位置を占めています。残念ながら院外ではWi-Fi少ないのでiPhoneがその役割を持ってます。iPhoneはiPadと情報をシンクできるので連続性は保てています。 こんな感じでiPadは確かに情報ツールとしては優秀。Androidでもいいと思おうけど、医療ではMacの流れがありアプリケーションはiPadなどのiOSが勝ります。じゃあどのように医療に導入すべきか。これは課題がいっぱいです。当面は電子カルテや画像システムあたりのリンクが現実的なところでしょうか。ソフト面の充実を期待しています。あとは自分で何ができるか。一内科医としてどのような活用ができるか。自分なりのスタイルはありますが、他の先生方の活用法が共有できればいいですね。時間があれば僕の活用法も具体的に公開したいと考えています。

欧州リウマチ学会に参加して

欧州リウマチ学会について報告文書を依頼されたので、ここにも掲載しておきます。 --- 欧州リウマチ学会に参加して この度私はイタリアのローマでおこなわれました欧州リウマチ学会(EULAR)に参加いたしました。そこで得られた知見を報告致します。 私が専攻する免疫内科学で扱う代表的疾患に関節リウマチ、各種膠原病があります。特に関節リウマチの治療の進歩はめざましく、生物学的製剤の登場により治癒できる疾患へとかわってきています。日本においても8年前に生物学的製剤が導入され、現在では複数の薬剤が使用できるようになりました。しかし海外と比較するとその数は少なく導入が遅れているのが現状です。欧州では最近日本でも承認されたAbatacept、まだ承認されていないGolimumabなどの新規生物製剤に関する臨床効果や安全性のデータがたくさん出ており、今後日本に導入されたときの参考になるデータを収集することができました。 また、欧米に特徴的なこととしてコストを勘案した治療を目指す考え方が印象に残りました。日本でも医療費の高騰は大きな問題になっています。特に皆保険制度のもとでは高額な医療は医療費を圧迫する原因となります。生物学的製剤は高価な薬剤であり、積極的に用いることは身体にとってよい結果をもたらす一方で、患者さんの経済的な負担が増えるだけでなく国の医療経済を圧迫します。本学会でも生物学的製剤治療には臨床効果とともにコストに見合ったものかどうかが数多くの研究で検討されていました。寛解に至った場合に薬剤を減量できるかどうか検討した研究もあり、患者さんの身体的・経済的負担の面でも医療経済の面でも重要なメッセージだと思います。日本の発表でも薬剤中止に関して素晴らしいデータが出ておりコストを勘案したベストな治療を目指すことがわが国でも現実的になっています。それを強く実感することができました。 その他、新たな知見としては2009年に発表された関節リウマチ新分類基準の予後予測精度についての調査発表がありました。スコアリングシステムによる分類の妥当性が評価され予後予測精度が高いことが実証されました。この分類基準の信頼性を支持したものであり、今後日本においてもこれを軸として導入されていくものと思われます。 関節リウマチ以外のリウマチ性疾患についてもいくつか新しい発表がなされていました。強直性脊椎炎に対

SoundPaper

昨日は感染症の症例検討会に行ってきました。有名な青木先生が症例にあたりながら診断へのアプローチを言葉にしてくれます。先生は前もって何の情報もなく僕らと同じ立場。知っているのはプレゼンターと座長だけ。それだけに診断へのアプローチはリアルタイムな情報で役立ちます。 前回の研究会と同様にiPadでメモ取りをしてみました。今回は長時間での実戦演習。僕は断片的な知識やメモ、クリップをEvernoteってとこに集めてます。よく第2の脳っていう表現されてるけど、まさに僕の第2の記憶場所です。最近の知識の集まりですね。そのEvernoteのiPadアプリがあって、そこにメモ。すると1時間ほどしたところで強制終了。情報は消えてしましました。急いで記憶を呼び起こしてiPad標準のメモに記載。ここでもしばらくしたら強制終了。その後はこまめに保存したけど、とったメモの2/3は失った気がする。記憶が浅い今日のうちに再びまとめて公式ブログにアップします。 昨日帰宅してからこの問題の解決法をさぐる。この問題はPCのWordやExcelにも起きてるけど自動保存で助かってる。そう、自動保存。これができるアプリを検索。そうするとありました。「SoundPaper」ってアプリ。これはタイプもできて手書きもできて、しかも同時に録音もできて、メモした場所とそのときの音声を同期してくれる。まさに講義内容をメモした僕の思考過程が再現される。いいアプリを見つけました。これで必要な情報のみをEvernoteに蓄積すればよいし、これはメール転送でできそう。今度の研究会で働かせてみます。学会で役立てるソフトになりそうな予感です。 http://www.appbank.net/2010/07/02/ipad/137677.php

Mendeley

Office2010を買いました。当初はインターネット上でOfficeファイルを編集・保存できるWindows Live Officeを利用するのが主たる目的でしたが、今はiPadを生かせるような環境に集約させているのでその目的はあまり大きな者でなくなりました。でもPowerPointは美しくなり、ExcelとPowerPointで使い勝手が結構よくなったので満足です。 しかしWordがすぐフリーズするので原因を探っていたらEndNoteという文献管理ソフトが問題でした。論文書くのによいツールですが、くせがあって使いづらく、Office2010に対応させるために新バージョンを2万円で買うよう誘導されるが、そんなにお金を出す価値はない。 そこで論文管理を見直してみた。論文作成時に引用が簡単にできて、今あるPDF論文資産を効率よく取り込めて整理できるもの、そしてリーズナブルなもの(質がよければ無料でなくてよい)。 ありました。Mendeleyというサービスです。 イギリスのサービスですが日本の研究者の間でも話題になっているようです。 複数のPCでも同期できる(PDF本体も) PDFから自動的にAbstractを含めた文献情報を取得してくれる テーマやタグ、スターなど様々な方法で分類、再分類できる 論文ごとにメモが書ける(日本語での簡単な要約に便利) Webに同期されるので自分のPCでなくても閲覧・修正・追加できる 未読か既読かも設定できる MS-WordまたはOpenOffice, Google Docsで引用が簡単に設定できる Webからでも指定したフォルダにPDFを保存しても自動的に登録してくれる 1GBまでは無料のサービスである などなど僕が求めていたサービスがいっぱいです。まだ始まったばかりなのにこの質は期待できます。 難点は英語だということですが、「Mendeley 使い方」とGoogleで引くと日本語であるし、そんなに難しくはない(少なくともEndNoteよりは簡単)。 おすすめです。興味がある方は、僕から招待メールとばします。 Mendeley - http://www.mendeley.com 研究者にとっていろんなツールが生まれて便利ですね。

糖尿病の新しい診断基準

本日まで岡山でおこなわれている糖尿病学会で糖尿病の新基準が示された。 今までは下記のような基準だった。 ①空腹時血糖値126mg/dL以上 ②75g糖負荷試験で2時間値200mg/dL以上 ③随時血糖値200mg/dL以上 上記のいずれかが2回以上認められるときに糖尿病とする。 HbA1cは参考所見のみで診断できない。 それが、 ④HbA1c値は6.5%以上(6.1%以上[JDS値]) という項目が加わった。ただし、1回はHbA1cの基準を満たしても、もう1回は上記①~③のいずれかを満たさないといけない。よく用いられるHbA1cの位置づけは上がったけど、それだけでは診断できず、あくまで従来の基準は1回は必要とのこと。 あと、①~③を1回満たして、網膜症など明らかな症状があれば、それで糖尿病との診断になるとのこと。実際的ですね。 それと「JDS値」。これはHbA1cは日本と海外では違った測定方法がなされており、日本のものだとJDSになる。0.4%低く出るみたいです。将来的には国際基準であるNGSPにあわせるようだが、当面はわざわざJDSと書いて表記するみたい。 これって、今まで糖尿病の目安を6.5ってしてきたのが、6.1として捉えないといけないんだね。検査値の表記が早く国際基準になるよう希望します。混乱をうまないために。

関節リウマチは自己免疫性疾患?リウマチ性疾患?膠原病?

今日はタイトルにあるようにリウマチ性疾患、自己免疫性疾患について書いてみようと思います。他にもリウマチ、膠原病などいろんな言葉が飛び交い、いったい何が何なのかよくわからないと思います。これは医師でもきとんと用語が整理されていないからです。その理由はまだまだ原因不明で病気として確立しておらず、時代の流れとともにその呼称や分類が変化しているからだと思います。 みなさんがよく耳にするであろう「リウマチ」。関節が痛くて変形していくというイメージをお持ちでしょうか。これは正式には「関節リウマチ」という病気です。本来ならウイルス・細菌などの外敵から自分(自己)を守る免疫に異常が生じて、自分を攻撃してしまうようになる病気を「自己免疫疾患」といいます。関節リウマチは異常な免疫が主に自分の関節を攻撃してしまうので、自己免疫疾患の1つとされています。「自己免疫性疾患」は病気の原因で名付けているのですね。他の自己免疫疾患には、膠原病といわれている病気(後で述べます)、1型糖尿病、甲状腺の病気などがあります。 一方で、昔から関節があちこち痛む病気があることが知られており、これを「リウマチ性疾患」と言ってました。症状から付けた名前ですね。関節リウマチも関節があちこち痛むわけですから、リウマチ性疾患の1つとされています。有名どころでは痛風もあちこち痛いのでリウマチ性疾患の1つです。 そして最後に「膠原病」。これはKlempererさんという先生が1942年に皮膚組織の膠原線維(コラーゲン)が増える病気として発表しました。「膠原病」とは実は組織の特徴から付けた名前です(症状や原因は関係ありません)。最初は全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、強皮症、結節性動脈炎、多発性筋炎・皮膚筋炎、リウマチ熱(後に感染症と判明)の6疾患だとされていました。今はリウマチ熱を除いた5疾患(関節リウマチも膠原病なんです)と、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、ベーチェット病、リウマチ性多発筋痛症、血管炎症候群(ANCA関連血管炎、ウェゲナー肉芽腫症など)なども含めて膠原病と呼んでいます。 まとめると、原因から名付けた「自己免疫疾患」、症状から名付けた「リウマチ性疾患」、組織の特徴から名付けた「膠原病」。関節リウマチはそのどれにもあてはまっちゃうのです。 僕は原因が大事だと思うので「自己免疫疾患」と呼ぶよ

特発性蕁麻疹

先日、京都で行われたアレルギー学会。特発性蕁麻疹に抗ヒスタミン剤というのは今までも常識的だったけど、いま策定中のガイドラインではもう少し踏み込んで第2世代以降の鎮静性の少ない抗ヒスタミン剤が推奨となるとのこと。考えてみれば当然だけど、皮疹に強い作用を持つけど鎮静性が強いものもある。両立するか効果を優先するか、この疑問に指針を示してくれたことになる。新ガイドラインが出たら読んでみよう。 ところで特発性蕁麻疹の定義って原因がはっきりしない蕁麻疹ってことだけど、これってとても多いと思う。この診断プロセスってまだまだあいまいなかんじだっだけど、診断も少し簡易なものになりそうなかんじです。

かぜ症候群~万病の元「かぜ」を予防しましょう~

医療ブログの第一歩。やはり患者さんへの発信でしょう。ということで、昨年書いた風邪のお話を載せておきます。冬に書いたものなのでちょっと時期外れですが。 ----- 『かぜ症候群~万病の元「かぜ」を予防しましょう~』  かぜがはやる季節です。日本人は平均して一年に五―六回かぜをひくと言われており、かぜをひいたことがない人はいないでしょう。 かぜといっても、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、たん、発熱など、様々な症状があります。実は、正式には「かぜ」という病名はなく、「かぜ症候群」として先ほどの様々な症状をきたす病気をまとめて呼んでいるのです。具体的には、咽頭炎(いんとうえん)、気管支炎、扁(へん)桃炎(とうえん)などの様々な病気が含まれます。  かぜの原因の約九割はウイルスによるもので、原因となるウイルスは二百種類を超えると言われています。インフルエンザもインフルエンザウイルスが原因で、広い意味ではかぜに含まれます。 こんな人は早めの受診を  持っている病気によって、かぜが重くなったり長引いたり、病状が悪くなる人もいます。次に該当する人は、かぜをひいたら必ず病院で受診しましょう。 ・肺気腫や肺線維症、肺結核、心臓弁膜症(まくしょう)などの診断を受けている人。 ・糖尿病や高血圧性心疾患、脳血管障害と診断されている人。 ・寝たきりの人や高齢者、免疫をおとすくすりを服用している人、感染に対する抵抗力が落ちている人。 ・気管支ぜんそくや腎炎で治療を受けている人。 かぜをひかない予防策  かぜは昔から「万病の元」と言われ、肺炎など重い病気を引き起こすきっかけにもなります。かぜの原因となるウイルスの多くは、寒くて乾燥したところを好みます。体力がなかったり、疲れがあったり、タバコで肺がいたんでいると、ウイルスに対する抵抗力がなくなります。ウイルスに対抗できるように、次のことに気をつけて予防に努めましょう。 ・手洗いやうがいをする。 ・必要に応じてマスクを着用する。 ・部屋を加湿する。 ・人混みは避ける。 ・睡眠を十分にとる。 ・暴飲暴食や偏食をしない。 ・タバコをやめる。 ・適度な運動で体力を維持する。 ・極端な厚着や薄着をしない。 ・インフルエンザワクチンの予防接種を受ける。 かぜの季節を乗り切れるようみなさんの健康をお祈りしています。